電界と電位の違いを理解することから電験の全てが始まるのです

電験(理論)の勉強と言うと、三相交流やらコンデンサやらオペアンプやらに気を取られがちなのですが、実はこの電界と電場の概念を理解することから全てが始まります。長年勉強しながら、何故か電験で合格点にあと一歩届かない人は、この根本部分をすっ飛ばして勉強してしまっていることが多い傾向にあるようです。ここでは、電界と電位について徹底的に理解し、電験を勉強するための土台を作ります。最初に穴埋め式で用語を正しく覚えましょう。次に本番レベルの問題で知識の定着を図りましょう。


電界とは重力みたいなもの

電界は、ある場所に \( +1 [C] \) の電荷を置いた時に受ける静電気力のことを言い、 \( E \) で表します。なお、単位は [ \( N \) ] を用いて( ① )と表します。また、電場と言っても同じ意味です。 工学系の人は電界という言葉を使う傾向が多いように感じます。他には、電界の強さという表現もあります。基本的には同じ意味です。

  \( [ N/C ] \)

上記のように電界の単位が表されることから、電界が点電荷から受ける力 \( F [N] \) は( ② )と表すことが出来ます。この \( F \)は重力みたいなものと考えておけばイメージしやすいかもしれません。ただし、重力のように上から下というのではなく、+とーが引き合う方向に働く力です。

  \( F=QE [ N ] \)

ここで大切なことは、公式を覚えることではなく、「単位をそろえるための計算をした」という捉え方です。 \( Q [C] \) を \( E [N/C] \) に掛けることで、分母の \( [C] \) が消去され、 \( [N] \) のみが残ります。

電験の知識はほとんどが、根底となる公式から導き出すことのできるものです。覚えることは実は少ないのです。忙しい社会人にはなんでもかんでも「公式」として暗記しようとする勉強は絶対におススメできません。最初のうちは少し面倒に感じたとしても、計算で考える癖をつけましょう。


見えない電界を見える電気力線にしよう!

電気力線は+Qから出てーQへ向かう架空の矢印である

電界という見えない力が働いていることは理解したものの、重力のように分かりやすい「力」ではないので、イマイチ実感が湧かないのではないでしょうか。そこで生まれた考え方が、電気力線です。( ③ )から出て( ④ )へと進む架空の矢印を電気力線と言います。電気力線は途中で別れたり、交わったりはしません。また、( ⑤ )には存在しません。点電荷 \( Q[C] \) から出る電気力線は( ⑥ )本です。

  \( +Q (正の電荷) \)

  \( -Q (負の電荷) \)

  導体の内部

  \( N=\frac{Q}{\varepsilon} \)(本) \( \varepsilon \):誘電率

  \( \varepsilon \)で表される誘電率は、分極のしやすさと言われますが、めっちゃ雑に言ってしまうと「電気の通しやすさ」です。例えば金属の誘電率は無限大と言われています。一方で、絶縁体の代表格とも言えるゴムは2~3程度らしいです。


電界を電気力線から考える

先ほどまでは電界を電荷が受ける力 \( [N] \) という視点で考えていましたが、ここからは電気力線の視点で考えます。電界を電気力線密度と再定義し、( ⑧ )と表すこともできます。

  \( E=\frac{\frac{Q}{\varepsilon}}{4\pi r^2} [本/m^2] =\frac{Q}{4\pi \varepsilon r^2} [V/m] \)

  中学校の勉強を思い出しましょう。\( 4\pi r^2 \) は球の表面積を表します。

  \( [V/m] \)という謎の単位が出てきましたがラストまで読み進めれば分かります。もう少しの辛抱です。

電気力線と似た概念に電束があります。電気力線は \(\varepsilon\) が含まれることからも分かるように、周囲の環境に影響を受けます。一方で電束は周囲の環境に影響を受けず、常に一定です。これを \( \psi [C] \)と表します。ここでの\( [C] \)は1本、2本…みたいな線の数を表すイメージです。そして、当然に電束密度を用いて電界を考えることもできます。 電界は電束密度と同義ですので( ⑨ )と表せます。

  \( E=\frac{\psi}{4\pi r^2} [C/m^2] \)


電位の定義と単位

ところで、先ほど新たな単位 \( [V] \) が登場しました。電位とは \( +1[C] \) を電界に逆らって移動させるのに要するエネルギーとされています。つまり、単位を表すと \( [J/C] \) です。これを \( [V] \)と定めます。ジュール\([J]\)は1\([N]\)の力に逆らって 1\([m]\) 移動するのに要するエネルギーです。つまり、

\( [V] = [J/C] = [N\cdot m/C] \)

と表せます。ここから \( [V] = [N\cdot m/C ] \Leftrightarrow [V/C] = [N/C] \) を導くことができます。これで⑧で急に出てきた単位 \( [V/m] \) の謎が解けましたね。

また、\( [V] = [J/C] \)から分母を払って \( [J] = [V]\cdot[C] \) が得られます。これが分かれば、コンデンサの蓄える静電エネルギー\( W=\displaystyle\frac{1}{2}QV [C]\cdot[V] \) も理解することが出来ます。1/2倍されているのは、向かい合う平板がコンデンサなので、そこからなんとなーくイメージはできますね(詳細は後日)。まあ、何はともあれ、電験の勉強の第一歩は単位変換です!


確認問題

ここまでの知識を確認するには、

  • 電験三種(理論)令和1年 B問題 問題15

を解きましょう。後日、このブログ内で解説を行います。今しばらくお待ちくださいませ。

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