三相誘導電動機の始動方法7選:負荷特性・容量に合わせた最適始動とは?

1.直入れ始動(全電圧始動)

三相誘導電動機を始動する際、電動機を直接電源に接続して始動する方式です。通常は、下図1のようにを介して誘導電動機への電源を供給します。原則的に以上の誘導電動機の始動は後述2~7の始動方法を用いることが推奨されています。その理由は、下記のとおりです。
全電圧始動時には、大きなを得ることが出来る一方で、定格電流の倍の大きな始動電流が流れます。ブレーカやサーマルを適切に選定しないと、始動電流でこれらが不要動作してしまい、「始動できない」なんて事態が起きてしまう他、自家発容量が持たなくなり、停電時にプラント全体を停止させるような最悪の事態を引き起こすことにもなりますので注意が必要です。
直入れ(全電圧始動)
【図1】

2.オープントランジション・スター・デルタ始動(オープン・スター・デルタ始動)

全電圧始動には大きな始動電流が流れてしまいます。この点を回避するのが、オープン・スター・デルタ始動です。下図2のように、最初は電磁開閉器を投入し、結線で始動します。これによって、電圧は定格電圧の倍となり、電流は定格電流の倍となります。
数秒後に誘導電動機の回転速度が上昇してきたら、今度は電磁接触器を開放してを投入します。始動電流が小さくなる為、も小さくなります。従って、大きな容量の誘導電動機では始動できません。また、スターからデルタへの結線切り替え時に、ほんの一瞬だけ電源が開放されるので、デルタ結線になった瞬間に大きなが流れるデメリットがあります。一般的には、程度以上の誘導電動機には、別の始動方法が適しています。
オープントランジション・スター・デルタ始動
【図2】

3.クローズドトランジション・スター・デルタ始動(クローズドスター・デルタ始動)

オープントランジション・スター・デルタ始動では、切り替え時に大きな始動電流が流れてしまいます。この点を回避するのが、クローズド・スター・デルタ始動です。下図3のように、最初は電磁開閉器を投入し、結線で始動します。これによって、電圧は定格電圧の倍となり、電流は定格電流の倍となります。
数秒後に誘導電動機の回転速度が上昇してきたら、今度は電磁接触器を開放してを一瞬(1秒以下程度)投入し、すぐに開放して今度はを投入します。一瞬だけ接続されたによって、流れる電流は小さくなり、電源開放が無いため大きな始動電流が流れません。
上記のメリットはありますが、3個の電磁開閉器や3相の抵抗器が必要となるので、コスト増や設置場所が必要になってしまうなどのデメリットもあります。
クローズドトランジション・スター・デルタ始動
【図3】

4.リアクトル始動

下図4のように、直列にリアクトルを接続して始動電流を制限する方法です。回転速度が上昇したら、電磁接触器を投入します。始動電流はに比例します。標準品は50-65-80%があります。スターデルタ始動が適応できないが、始動電流を抑えたい場合に、で用いられ、誘導電動機でも用いられます。
リアクトル始動
図4
(参考)
あまり用いられませんが、一相のみにリアクトルや抵抗を挿入して指導するもあります。低コストですが、が生じてしまう他、始動電流の低減効果もそれほど高くない等、デメリットが目立ちます。

5.コンドルファ始動

下図5-1のようなコンドルファ始動器を挿入します。仕組みはリアクトル始動と似ていますが、さらに始動電流を抑制することが可能で、始動タップのに低減することが出来ます。大きく始動電流が抑えられるので、電圧降下を防止できます。程度の大型誘導電動機で用いられます。
【図5-1】特殊コンドルファ始動器:電光工業製
接続は下図5-2となります。電磁接触器が投入されて始動し、回転数が上昇したら、電磁接触器が開放され、が投入されます。
コンドルファ始動
【図5ー2】

6.インバータ始動

インバータを用いて、で始動し、徐々に回転数を上げていきます。始動電流は定格電流のに低減できる一方で、で始動することで、大きなトルクを得られ、損失も低減できるので、省エネにもなります。
一方で、インバータは発生源となるため、系統への流出防止の為に対策が必要になることは勿論のこと、自分の設備へのも必要です。通常は、を分けるなど、大掛かりな対策が必要です。また、インバータは電子機器ですので、リレーや電磁開閉器ので故障することもあるので、とするも必要です。いろいろと面倒ですね。
インバータ:三菱電機
【図6】インバータ:三菱電機製

7.二次抵抗始動

これまで紹介した1~5の始動方法はに採用される始動方法です。この二次抵抗始動はに適応できるものです。下図7のような始動抵抗器を、二次側に接続します。抵抗器は、可変抵抗器です。
始動時はとして、回転数の上昇に伴って抵抗をします。始動電流を小さくする一方で、高いを得ることが出来ます。それは、の特性を用いているからです。
【図7】金属抵抗器:明電舎製
比例推移とは、の場合、に比例する特性です。
これを誘導電動機の始動時に当てはめてみます。始動時は、滑りはで、固定ですから、逆にトルクを大きくするには、を大きくすれば良いと言えます。
二次抵抗始動は、大きなメリットがあります。その一方で、始動抵抗器や等の補機も大掛かりになる上、のメンテナンスも必要になるなど、デメリットもあります。

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