「同期安定性」は「過渡」と「定態」に着目:等面積法の前提知識3選

同期安定性とは何か?

連携するの入出力がした、に運転できる範囲にあることであり、
同期化力
で表されます。上記がとなる時、同期安定性があります。
この同期安定性には、短絡や地絡などの事故時の同期安定性を指すと、負荷変動やタップ切替動作などの平時の同期安定性を指すの2種類があります。以下、それぞれの安定性を高める対策を確認します。

ポイント1:電力と相差角の曲線から安定性 を理解する

P-δ曲線の見方を理解することが全てのスタートです。ここを疎かにしたまま、電力系統の学習は出来ないと言っても過言ではありません。縦軸にP()、横軸にδ()を取ります。\(P=\propto\)です。平常時では、機械的な出力Pmと電気的出力Pは一致しています。
ただし、\(E_s\)は送電電圧(相)、\(E_r\)は受電電圧(相)です。
この式と下記グラフを関係づけると分かることは次の2つです。
1. Xが大きくなると、曲線の頂点はなります(図2参照)。
2. δが大きくなると、運転点はへ移動します(図3参照)。
ここまでのことを理解していれば、ポイント2以降の内容を簡単に理解することが可能です。
P-δ曲線

ポイント2:過渡安定性を理解することから全てが始まる

平時の曲線は下図4のAです。そして、運転点はaです。ここで、送電線に一線地絡事故が起きると、リアクタンスは大きくなり、運転点は(図の記号)に下がります。そして、発電機は機械的入力Pmが電気的出力Pよりもなるので、運転点はへと移動します。ここで、保護装置によって送電線は開放されて、グラフは(図の記号)になり、運転点は(図の記号)になります。送電線が仮に2回線だとすると、送電線リアクタンスXは1回線を停止することで倍になる為、ポイント1で確認したように、曲線の変化を理解することが出来ます。
P-δ曲線(平常時-事故時-事故除去)
事故が除去されたのち、機械的出力Pmよりも電気的出力Pが大きくなる為、発電機はするはずですが、実際には事故時に得た加速エネルギーによって、相差角は拡大して、運転点はへと移動します。
この後、発電機の回転数が低下して安定するか、そのまま上昇して脱調するかは、等面積法によって判断されます。 グラフの(図の記号)で囲まれた部分の面積が(図の記号)で囲まれた部分の面積より小さければ、発電機回転数は低下して安定します。この時、同期安定性が保たれていると判断できます。
P-δ曲線(等面積法)
領域\(S_1\)は事故時の「加速エネルギー」を表しており、領域\(S_2\)は「減速エネルギー」を表していると言えます。事故が発生すれば、送電線の開放によって負荷が無くなり、発電機は加速する。脱調を抑制する為に再閉路する、という流れが、このP-δ曲線に表れていることをしっかりと確認できていればOKです。
過渡安定性を高めるのに有効な対策は下記の3つです。
 1. 発電端近傍にを設置することです。故障発生時のを上昇させます。これによって加速エネルギー部分の面積\(S_1\)が小さくなります。
 2. 故障電流を高速に検出する保護リレーによって、を行って、より速く電圧を回復し、加速エネルギーを抑制します。この場合、1秒程度のごく短時間に復旧をする方式を用います。
また、汽力発電所においては、を行い、発電機の加速を抑制します。これは、タービンのに高速で動作するを設置するものです。事故時には、し、バイパス通路に蒸気を逃がします。

ポイント3:小擾乱同期安定性(定態安定性)を極める

平時に送電電圧が変動する主な原因は、変圧器のや、です。基本的に小擾乱同期安定性を高める対策は、過渡安定性を高めるのに有効です。ポイントは「送電電力Pの増大」と、「リアクタンスXの低減」です。下記の4つを覚えておきましょう。
 1. 付き高速を設置します。平時では発電機端の電圧を一定に保ち、事故時には速やかに電圧を高める働きをします。さらに、収束後における系統動揺を速やかに減衰させる機能も持っています。のみを設置すると、電力系統の動揺が継続する可能性が生じます。
 2. を用いて、進みから遅れまで的に無効電力を制御します。
 3. 送電線をして、リアクタンスを低減します。
 4. 送電線に直列にを設置することで、リアクタンスを低減することも可能です。
送電線リアクタンスXを低減する方法が設備的には可能ですが、が大きくなってしまう点には注意が必要です。この点の対策については後日追記します。

確認問題①

後日追記予定

確認問題②

後日追記予定

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