計器用変成器はなぜ必要なの?VTとCTの原理と配線の注意

計器用変成器とは

回路図(VT及びCT)
図1

上記の回路図(図1)でのVTやCTと書かれている部分がここでの解説する内容です(本来はもっとトランスデューサやらなんやらがありますが、簡易的にしています)。この計器用変成器は現場に行くと、ほぼ100%の確率で出会うことになるでしょう。では何故この計器用変成器が存在するかと言うと、大きく分けて2つあります。

まず一つ目は、コストカットです。例えば電流値は接続する負荷によって実に様々な値に変化します。そんな電流値に対して、それぞれの負荷に合わせて計測器や指示計を作っていたらとてつもなく膨大なお金も手間もかかります。そこで、変成器を使って電圧は110V、電流は5Aに規格化し、省力化を狙いました。

もう一つの理由としては、安全性です。下図(図2)のように一番左の主回路に流れる電流や電圧は大きなものです。直接計測しようとすると事故が起きたときには様々なところに波及する可能性があります。そこで、変成器を用いて電気的に独立した小さな電気を作って安全性を確保することにしたのです。

計器用変成器(1次回路と2次回路)
図2

上述のようにとても便利な変成器ですが、正しく使わないと新しい危険の温床となってしまいます。VTやCTに関する知識の重要性は、電気工事士や電気主任者試験でもVTやCTに関する問題が頻出であることに鑑みて明らかです。原理を理解出来れば、配線方法や安全な使い方もすんなり理解することができますよ。

計器用変成器の原理

変成器(変圧器も同じ)ですが、基本的な用語を押さえておきましょう。図3の左側、大きな電気が流れることになる主回路側を1次側と呼びます。一方の図3の右側、指示計など(図2のAやV)に流れる側を2次側と呼びます。1次側コイル巻数を \( N_1 \) 、2次側コイル巻数を \( N_2 \)、1次側電圧を \( V_1 \) 、2次側電圧を \( V_2 \) 、1次側電流を \( I_1 \) 、2次側電流を \( I_2 \) とすると次の関係が成り立ちます。

チェック

   \( N_1 : N_2 = V_1 : V_2 \)

   \( N_1 : N_2 = I_2 : I_1 \)

なお、上記から \( \frac{N_1}{N_2} = \frac{V_1}{V_2} = \frac{I_2}{I_1} = a \) の式を導くことができます。ここで、 \( a \)を変成比と呼びます。ここまでのことを理解してから先に進みましょう。電気の変成は、電磁誘導によって誘導電流が発生する仕組みを利用しています(図4)。

変成器の動作原理(VT/CT)
図3
  1. 1次側コイルに電流が流れる
  2. 電流の流れが磁界を発生させる(電磁誘導)
  3. 鉄心を磁界が通る
  4. 2次側コイルに磁界の変化が起こる
  5. 磁界の変化を妨げるように電流が発生する(誘導電流)

以上の順番で、1次側と2次側が電気的には絶縁されながら電気が流れます。この時、鉄心に巻き付けられたコイルの巻数比に従って電気が変成されます。

VT(計器用変圧器)

Voltage Transformerの頭文字をとってVTと呼びます。この変圧器は文字通り電圧を変成する為の機器です。図4みたいな機器です。一般的には110Vに変成します。かつてはPT(Potential Transformer)と呼んでいたものです。1次側にはヒューズを設置しなければなりません。また、3相の場合には2台のVTを用いて計測を行います(V結線)。V結線に関しては後日追記します。

図4:PEシリーズ(三菱電機)

VTの取り扱いに際しての注意点は「二次側を短絡してはいけない」ということです。短絡すると、2次側に大電流が流れてしまい、焼損、さらには絶縁破壊を引き起こし、1次側の電気が2次側に流れて大きな事故に波及してしまいます。この現象は、オームの法則で簡単に理解できます。\( V=IR \) の左辺は \( 110V \) です。短絡するということは、\( R = 0 \) となることです。この時、右辺の \( I \)は反対にどんどん大きくなります。二次側を短絡すると危険な理由です。

CT(計器用変流器)

Current Transformerの頭文字をとってCTと呼びます。この変圧器は文字通り電流を変成する為の機器です。一般的には5Aに変成します。CTは2つのタイプが存在します。一つは、図5のようなタイプです。1次側を左右の導体に接続します。うっすら本体部部に K とか L という表記が見えるでしょうか?Kが電源側を表します。一方のLが負荷側です。ここを確認すれば結線の際に間違えがなくなります。

図5:CDシリーズ(三菱電機)

もう一つは貫通型と呼ばれるものです(図6)。穴が開いている部分に1次側のR相またはT相を通します。2次側はネジ端子に配線を行います。低圧はこちらの変流器が用いられることが多いです。配線用遮断器や電磁開閉器のすぐ下に配置されていることが多いかもしれません。

貫通型変流器
図6:CC3L(富士電機)

穴に通す貫通型の変流器の場合には、「ターン数(貫通数)」を理解することが重要になってきます。1ターンは穴に通しただけの状態です。2ターンとは貫通穴に電線を通した後、変流器の外側に巻き付けて再度貫通穴に通した状態です(貫通穴には電線が2本通った状態)。ターン数を増やすことで、容量の大きな整流器で小さな電流を変流することができるようになります。例えば、CC3L-1-0605 (1次側60A / 2次側5A) を例に考えてみましょう。

  • 1ターン:1次側60A / 2次側5A
  • 2ターン:1次側30A / 2次側5A
  • 3ターン:1次側20A / 2次側5A
  • 4ターン:1次側15A / 2次側5A

ターン数 \(N\) として定格1次電流が \( 1/N \)倍されます。つまり、機器の更新で計測する電流値が小さくなった場合などには、機器を交換せずにターン数を増やすことで対応が可能になり、費用や手間を削減することに繋がります。

最後にもう一つ。3相のうち2相に対してCTを設置して計測を行うことを理解しておきましょう。それぞれ1相分を接続または貫通して計測を行います。「3相あるのにどうして2相分の計測しかしないのか」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。3相交流では \( \overrightarrow{I_1}+ \overrightarrow{I_2} + \overrightarrow{I_3} = \overrightarrow{0} \) の関係式が成り立ちますので、2相が分かれば、残りのもう一つはわざわざ計測せずとも求めることが可能なのです。便利ですね。

おまけ:ZCT(零相変流器)

計器用変流器と似たような形の零相変流器というものが存在します(図7)。そっくりさんですが、役割が異なります。先ほどまでの変成器が「計測」を目的としていたことに対して、この零相変流器は「地絡電流(漏電)検知」するための機器です。

先ほどは1相の配線を貫通させていましたが、零相変流器では3相分をまとめて貫通させます。3相交流では \( \overrightarrow{I_1}+ \overrightarrow{I_2} + \overrightarrow{I_3} = \overrightarrow{0} \) の関係式が成り立つので、正常に電気が流れていれば、この変流器で測定されるのは 0A のはずです。この値が0Aにならないときには、どこからか電流が漏れ出て、地絡(漏電)していると考えることができます。

図7:BZ-Cシリーズ(三菱電機)

なお、零相変流器は指定の保護継電器と合わせて用います。

引用・参考

ここまでの話をより専門的に信頼性のあるサイトで確認した場合には、以下URLをご参考にすると良いと思われます。機器の仕様や取り扱い方法に関しては、メーカカタログ及び仕様書、取扱説明書をご覧ください。

https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/pmng/pmd/items/itr/index.html (三菱電機)

https://www.fujielectric.co.jp/technica/beans/05.html (富士電機)

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