DC4-20mAとDC1-5Vって何ですか?:盤外配線と盤内配線の視点で理解

アナログ信号とデジタル信号

工場やプラントでは流量や濃度、風量や圧力、温度などなど…さまざまな数量を計測し、制御を行っています。このような計装機器の測定値を把握するために私たちが現場でよく目にするのが DC4-20mA と DC1-5Vという信号です。両者の電気的特性の違いを正しく理解することが、電気の仕事の第一歩です!

DC4ー20mAやDC1-5Vを理解する前に、アナログ信号とデジタル信号が何を表すのかを理解しておかなければなりません。まず、デジタル信号とは、ON/OFF の信号です。例えばスイッチの入/切や負荷の運転/停止がこれにあたります。また、別の制御盤からのON/OFF信号を受け取る場合の入力信号をDI(Digital Input)、逆に別の制御盤へ送り出す場合の出力信号をDO(Digital Output)と呼ぶこともあります。

これに対してアナログ信号とは、水位や温度、弁の開度や濃度、圧力などの物理的な幅のある量のことを言います。これらの値は多種多様で、単位もバラバラです。そんな面倒な信号を、統一的に扱うために規格化した信号がDC4-20mAとDC1-5Vです。これによって、信号を取り込むPLCや変換器の仕様も統一し、大量生産が可能になりました。ちなみに DC は「直流」、AC は「交流」です。

DC4-20mAとDC1-5Vの実例

ここでは「水位」を例にアナログ信号を考えてみましょう。下図1のように0.00~8.00mの深さの井戸の水位を計測することを考えます。水位計は投込式(圧力式)のものをイメージしています。水位の計測方法は超音波式やら差圧式やら、様々なものがあります。後日詳述しようと思います。

図1

この水位とアナログ信号の関係性は下表1のようになります。

 水位  割合  DC4-20mA  DC1-5V 
0m0%4mA1V
2m25%8mA2V
4m50%12mA3V
6m75%16mA4V
8m100%20mA5V
表1:アナログ信号と水位の関係

水位が1mの時、DC4ー20mAでは、何mAを示すでしょうか?割合では1/8ですから、16mAの幅だと、\(16\times\frac{1}{8}=2\)mAです。0%の時は4mAなので、4+2=6mAと計算することが出来ます。小学校の算数「割合」を思い出してもらえると良いでしょう。とは言え、実際の現場では、このアナログ信号を私たちが認識しやすい水位の値にコンピュータが変換して表示してくれるので、特に問題は生じません。

DC4-20mAのメリットと配線

電流値を用いて計測を行う方法です。DC4ー20mAのメリットは主に2つです。まず第1に「長距離でもちゃんと信号を届けられる」ことです。信号の発信元(先ほどの例でいえば、「井戸」)と信号を受け取る場所(制御盤や中央監視室)の距離は離れていることが多いです。電気の仕事をしている人で、山の奥深くまで分け入った経験のある人は多いでしょう。そんな遠方との信号のやりとり(一般的には「伝送」と呼ぶ)において、DC4ー20mAは適しています。

この現象を理解するためには、中学校の理科で習った 直列回路 を思い出してみましょう。下図2のように出発点から終わりまで1本でつながっている回路のことを言います。この直列回路においては、a、b、c、dのどの地点で電流を計測しても値が変わりません。

図2:直列回路

一方で、電圧は抵抗を通ると減衰してしまいます。この「抵抗」にはもちろん「電線」も含まれます。確かに電線は電気を通しやすい素材で作られてはいますが、抵抗が0ではありません。これが長距離になればそれ相応に抵抗値は大きくなります。したがって、長距離伝送が必要な場合にはDC1-5Vで扱うことはできないということです。

第2に「DC1-5Vの取り出しが容易である」ことです。後ほど解説しますが、DC4-20mAとDC1-5Vはどちらかしか使わないものではなく、必要に応じてどちらも利用するものです。その際、DC1-5VからDC4-20mAを取り出すには信号変換器(トランスデューサ)が必要になります。しかし、DC4-20mAからDC1-5Vを取り出すには「シャント抵抗(250Ω)」と呼ばれる抵抗を信号受信側の端子に並列に接続するだけでOKです。

この原理を理解するのにも中学校の理科の授業で習った知識だけで大丈夫です。今度は 並列回路 を思い出してみましょう。下図3のように出発点から分岐する回路のことを言います。この時、分岐した回路では\( V_be=V_cf=V_dg=E \)の関係が成り立ちます。電流はそれぞれの回路に分かれて流れます。先ほど出てきた「シャント」というのは、「脇道」という意味です。並列回路は電気の脇道ですから、納得の名前ですね。

図3:並列回路

実際の計測では電圧入力計測器側に250Ωのシャント抵抗を接続して並列回路を作ります。オームの法則 \( V=IR \) に従うと 機器に流れる電気の電圧は下表2のようになります。確かにDC1-5Vを取り出すことが出来ています。なお、間違えて信号発信源側の端子に抵抗を接続してしまうと、DC1-5Vでの伝送となってしまい、正しい計測ができなくなってしまいます。原理を理解して正しく抵抗を接続してください。

 電流値  式  電圧 
  4mA  V = 4mA × 250Ω  1V(1000mV) 
 12mA  V = 12mA × 250Ω 3V(3000mV)
 20mA  V= 20mA × 250Ω 5V(5000mV)
表2:オームの法則

電流は計測器側にも流れますが、計測器側のインピーダンス1MΩと大きいため、計測器側に流れる電流は非常に小さく無視できるレベルと言えます。したがって、上記のようにDC4-20mAからDC1-5Vを取り出すことが出来ます。

その他、DC1-5Vに比べてノイズに強いなどの利点もあります。


ここまでDC4-20mAのメリットを見てきました。ここからは実際の機器への配線の注意事項を確認しましょう。下図4のように直列に配線します。ここでは、指示計と調節計、PLCのAIモジュールに接続するものとします(各機器については後日)。現実的に接続できるかどうかの問題はここでは考えないようにしましょう。

PLC、調節計、指示計への直列回路を用いたDC4-20mAの配線図
図4:DC4-20mAの配線

信号発信源の+端子と負荷側の+端子を繋ぎ、信号発信源のー端子を負荷側のー端子と繋ぎます。そして、負荷側は+端子とー端子を順々に接続します。ここが最初は分かりにくいかもしれませんね。この信号発信源の+からーまでの回路を「ループ」と呼びます。

先ほどまでDC4-20mAの良いところばかりを書いてきたので、万能な気がしていたのですが、このループが厄介です。DC4-20mAのループは、途中で一つでも機器が故障したり、どこかで断線してしまったりしたら、このループは信号を送れなくなってしまいます。DC1-5Vの場合にはそのようなことはありません。

DC1-5Vの配線

DC1-5VはDC4-20mAとの比較でほとんど話が出てしまったので、特筆することはありませんが、配線方法は図で確認しましょう。図5のように並列に接続します。ここでも信号発信源の+端子と負荷側の+端子、信号発信源のー端子と負荷側のー端子を繋ぐことは変わりません。負荷どうしを+→ーでつなぐことが無いので、迷わなくて良いですね。

PLC、調節計、指示計への並列回路を用いたDC1-5Vの配線図
図5:DC1~5Vの配線

並列接続する場合の注意点はインピーダンス(抵抗値)です。機器の仕様書には必ずこのインピーダンスに関する記述があります。例えば、第一エレクトロニクスのFSTT-0C75XF10を考えてみましょう。この仕様書には「出力インピーダンス600Ω以上」と記載があります。下記の機器を接続することは可能でしょうか?

  • アナログ入出力ユニット(Q64AD-GH):入力インピーダンス1MΩ
  • 調節計(TC10NM-A-M2):入力インピーダンス1MΩ
  • 計装用指示計(DEF-17S):入力インピーダンス1MΩ

並列回路ですので、インピーダンスは下記のように計算できます。詳しい説明は後日、電験3種理論科目の解説の際に行います。

\( \frac{1}{R} = \frac{1}{1MΩ} + \frac{1}{1MΩ} + \frac{1}{1MΩ} \)

\( \frac{1}{R} = \frac{3}{1MΩ} \)

\( R = 333\) kΩ

これは 600Ω 以上ですので、この接続はOKです。機器を増やしていった結果、抵抗値が600Ω以下になってしまうと正しく計測値が遅れなくなってしまいますので、設計の際には気を付けてください。

盤内と盤外での使い分け

最後になりました。ここまで学んできた2つの計装信号の使い分けについて解説を行います。もちろん例外は存在しますが、一般的には「盤外はDC4-20mA」、「盤内はDC1-5V」で伝送を行います。下図6を見てください。現場(井戸)の水位信号をDC4-20mAで伝送してきたものを制御盤のアイソレータでDC1-5Vに変換した後に、PLCや調節計、指示計に渡しています(インピーダンスは無視しています)。盤内の信号をDC1-5Vで扱うことで並列接続することが可能になったので、どこかしらの機器が一つ壊れたとしても、計装ループは生きています。

水位計と制御盤の信号のやり取り
図6:井戸水位を制御盤で取り込む

本当は制御盤に入ることろにアレスタを設置するか、変換器に外部電源が必要かどうか、などのいろいろ考えるべきことはあるのですが、ここでは割愛します。このページでは、基本的にアナログ信号はだいたいこんな形でやりとりしていることをご理解いただければ大丈夫です。基本的な統一信号を理解しておけば、現場でも何をしているかが分かるようになりますよ。

引用・参考

https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/b_electric/9608/index.html (エムシステム)

https://www.daiichi-ele.co.jp/product/pdf/Fine_FSTT_Reva.pdf (第一エレクトロニクス:FSTT仕様書PDF)

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